会社にとって、社名は非常に重要なものです。
日本には約420万の会社があるということですが、その中でもなんでこの社名にしたんだろう?という社名も数多くあるかと思います。
この記事では、仏教に関係する、由来する社名をつけている企業をご紹介します。
サンスクリット語が由来!カルピス株式会社
企業としてのカルピスの創業者は、僧侶出身の三島海雲である。創業初期より、後に日本初の乳酸菌飲料となる「カルピス」を生産していた。これと共に、脱脂乳(英語版)の生産の際に副産品として製造を開始したとされるカルピスバターが主力商品である。
味の素との提携後は、カルピスを製造時に水で希釈調合しすぐに飲めるようにした清涼飲料水「カルピスウォーター」の生産、ミネラルウォーターの「エビアン」やワインの輸入、カクテル「カルピスサワー」などのアルコール飲料にも進出している。
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誰でも知っている飲料、カルピス。夏の風物詩とも言えるカルピスですが、いまでは巨峰味などさまざまな種類のカルピスが発売されています。(※ロゴ:カルピス株式会社より)
このカルピスという言葉は造語です。
「カル」+「ピス」=カルピスという組み合わせになります。それぞれみていきましょう。
カル:カルシウム
ピス:サルピス
カルシウムは言わずとも、牛乳などに含まれるカルシウム(Ca)ですね。では、ピス、サルピスです。このサルピスがサンスクリット語なんです。この言葉は、仏教の五味の熟酥の意味です。この熟酥を語源とする場合や、醍醐味を語源とする説があるようなので、2つともご紹介いたします、、、。
涅槃経に、牛乳を精製してできる五つの過程、乳酪、生酥、熟酥、醍醐と五味が説かれ、牛乳の精製過程で生じるこれらの味のうち、最後の醍醐を涅槃 (究極の理想) にたとえられます。
熟酥:サルピス
醍醐:サルピルマンダ
サルピスのピスから取ったという説や、サルピルマンダから取ったが、カルピルだと端切れが悪いということで、意味合い的には醍醐、つまり美味という観点を残しつつ、表現をし、カルピスとしたようです。
ちなみに、五味とは、以下のことです。
- 乳味(にゅうみ):牛乳
- 酪味(らくみ):ヨーグルト
- 生酥味(しょうそみ):生バター
- 熟酥味(じゅくそみ):精製バター
- 醍醐味(だいごみ):チーズ・精製バターを溶かしたときにできる上澄み
この精製過程でチーズ、醍醐味が最高のものとなります。
お寺の息子だった!カルピス創業者:三島海雲
カルピスの創業者である、三島海雲氏は、なんと大阪府箕面市萱野の浄土真宗本願寺派のお寺の息子として生まれ、13歳で得度をされているそうです。
浄土真宗本願寺派のお寺の息子として生まれる。
本願寺文学寮(現在の龍谷大学)を卒業後、英語教師として赴任。その後、仏教大学(現在の龍谷大学)に編入
内蒙古(現内モンゴル自治区)滞在中に酸乳に出会う。現地で体調を崩し、瀕死の状態にあったが、すすめられるままに酸乳を飲み続けたところ回復を果たす
カルピスの前身となるラクトー株式会社を恵比寿に設立。発酵クリーム「醍醐味」、脱脂乳に乳酸菌を加えた「醍醐素」、生きた乳酸菌が入った「ラクトーキャラメル」などを開発、販売するがことごとく失敗
試行錯誤の末、世界で初めての乳酸菌飲料の大量生産に成功。7月7日にカルピスとして発売する。
海外では名前が違う!そのまま呼んではいけないカルピス
アメリカやカナダ等の英語圏へいくと、カルピスを売ってはいるのですが、なんと呼び方が違います。
CALPICO(カルピコ)
日本でおなじみのカルピスではないんですね。その理由が発音にありました。
このカルピス、英語圏の方々にはとある言葉に聞こえてしまうそうなのです。
COWPISS(COW+PISS:牛のおしっこ)
あの美味しいカルピスとはかけ離れた言葉となってしまい、連想させるイメージは非常に悪いものになってしまいますね。飲料には不適切なものとなってしまうため、苦渋の決断で商品目を変更したそうです。
燃え上がる観音像!キヤノン
1937年設立のOA機器の総合メーカー。おもな事業内容として、オフィスビジネスユニット(オフィス向け複合機、レーザー複合機、レーザープリンターなど)、イメージングシステムビジネスユニット(レンズ交換式デジタルカメラ、コンパクトデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、交換レンズ、インクジェットプリンターなど)、産業機器その他ビジネスユニット(半導体露光装置、フラットパネルディスプレー露光装置、医療画像記録機器など)を展開している。米州、欧州など海外売上高比率がきわめて高い。16年12月に医療用機器を手がける東芝メディカルシステムズ(TMSC)を子会社化した。1949年の上場以来、年間での赤字は一度もない。
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キャノンのカメラ、最初の試作機は「KWANON(カンノン)」と名づけられたそうです。「観音様の御慈悲にあやかり世界で最高のカメラを創る夢を実現したい」という願いを込めてつけられたものです。当時のロゴマークには千手観音が描かれ、火焔をイメージしたKWANONの文字がデザインされていました。
このロゴをみて分かる通り、観音像がストレートに表現されていて、いかにも!という感じです。
ミツトヨ
株式会社ミツトヨ(英: Mitutoyo Corporation)は、神奈川県川崎市高津区に本社を置く測定機器メーカー。ノギス、マイクロメータの日本国内シェアは約90%、日本国外でも高いシェアを占める。 社是は「良い環境 良い人間 良い技術」、社訓は「誠実 深慮 敢闘」。
創業者・沼田恵範が仏教伝道のためにザ・パシフィック・ワールドを刊行するも資金難のため廃刊。そこから、継続的な仏教伝道のために資金源が必要であることを学び、工業化が進む日本において基幹技術となる測定器に着目した。 科学技術による貢献と仏教布教による貢献の2つの柱で社会貢献することを目的とし、前身となる三豊製作所を設立する。三豊の名前は、3つの漢字からなる熟語の天地人、智仁勇に仏教用語の仏法僧を加えた3つから来ている。
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なんと、仏教伝道のため雑誌を発行するが、資金難となり、資金を集めるために、測定器メーカーを立ち上げる。なんともすさまじい胆力です。
仏教伝道に尽力したこの方の歴史をおってみたいと思います。
ミツトヨ創業者もお寺の息子だった!沼田惠範
カルピスの創業者に続き、ミツトヨの創業者もお寺の息子でした。浄土真宗本願寺派浄蓮寺の三男として(カルピス創業者に続き、またまた浄土真宗本願寺派・・・!)生まれ、開教使補となり、渡米し、その後、伝道のためになんと起業し、現在の仏教伝道協会を設立します。我々寺院にとって欠かせない存在となっている仏教伝道協会ですが、このような方によって設立され、布教の大きな手助けとなっています。
広島県東広島市志和町の浄土真宗本願寺派浄蓮寺第16世沼田惠生師の三男として生まれる。幼時より篤信の母より深い感化と受け、伝道を志す。
浄土真宗本願寺派よりアメリカ開教使補に推され渡米する
仏教をアメリカに伝えるため英文雑誌「ザ・パシフィック・ワールド」を発刊し全米に寄贈
後、資金難により休刊。伝道のため経済的基盤の確立を決意
仏教伝道のため起業を志し、マイクロメータの国産化を目指して東京・武蔵新田に研究所を開設
財団法人仏教伝道協会を設立
仏教伝道のために起業!
「仏教聖典」の多言語化等以下の様々な伝道事業を行う仏教伝道協会という団体があります。この団体を語るにおいて、この人物を知らずしては語れないといっても過言ではないほどの功績を残されているのが、このミツトヨの創業者です。
仏教伝道協会のことを語るには、先ず一人の実業家・沼田惠範師(株式会社ミツトヨ創業者1897~1994)のことを語らなければならない。
発願者 沼田惠範
彼は、去る昭和9(1934)年に現在の事業を始めたとき以来、事業の繁栄は天・地・人により、また人間の完成は智慧と慈悲と勇気の三つが整ってのみできるものであるとして、技術の開発と心の開発をめざして会社を設立した。
世界の平和は人間の完成によってのみ得られる。人間の完成を目指す宗教に仏教がある。
彼は半世紀をこえる会社経営のかたわら、仏教伝道のために仏教音楽の普及と現代化を志し、仏教聖画や「仏教聖典」の普及に努めてきたが、昭和40(1965)年12月、これら一切の仏教伝道事業を組織化し、これを世界平和の一助とするために私財を寄進した。
お寺の息子として生まれ、渡米し、アメリカで仏教伝道に尽力し、かつそこで仏教伝道のための英文雑誌を創刊というから、これまたすさまじい。しかし、資金が行きづまり、西本願寺や渋沢栄一らから援助を受けたものの発行停止に追い込まれてしまったといいます。仏教を広めるためには資金が必要だということを痛感し、工業化が進む日本において基幹技術となる測定器に着目し、事業を開始したといいます。
伝道のため、単に資金を集めるのではなく、自らが事業を行い、その事業でもって伝道を行う。そして、組織化し、継続性を持ち組織運営を行っている。さらには子会社の食品会社では、僧侶のタンパク源である湯葉や湯葉関連商品(湯葉スムージーなど)を生産・販売している。
この方の功績は本当に素晴らしいものがあります。いまこうして、あらためてこの方を想うと、大変刺激になります。