新型コロナウイルスの感染拡大により、お葬式の規模も縮小傾向にあります。
よく聞くのが、こんなご時世だから「家族葬」で、、、という言葉や、
小さなお葬式という名前にあるように、お葬式の小規模化を謳っている事業者もいます。
無駄を省く。
たしかにそれは必要なことだと思います。いままでブラックボックス化されていたことが、技術の発展により可視化され、必要な人に適切なサービスをお届けする、ということはとても重要なことです。
もともとお葬式は通夜と葬儀式がセットでしたが、昨今では、一日葬や直葬、家族葬という言葉が出てきました。ある種、これらは葬儀社さんが作り出したプラン名称です。要するにお葬式のバラ売りです。
・なんとなくイメージで規模を小さくしたいから家族葬で。
・新型コロナウイルスが蔓延している昨今なので、密葬で。
なんていう言葉が飛び交っているように思います。
特にこの密葬という言葉は「密」という言葉から、訃報欄等には載せず、ひっそりと身内だけで行う、というイメージを持つかもしれませんが、それだけでの意味ではありません。
それぞれの葬儀の呼び方がどのような意味を持っているのか、わかりやすく見比べてみましょう。
お葬式の呼称は形態と規模の話がごちゃまぜになっている!
お葬式の一連の流れ
まず、それぞれの形態による違いを見る前に、お葬式全体の流れをみてみましょう。そこからそれぞれの形態の葬儀がどこを切り取ってつくられたものなのかが見えてきます。
おおまかに一連の流れは上図のようになります。地域や火葬場の都合により「火葬」のタイミングは変わることがありますが、スタンダードな流れはこんな感じです。
また、いまとなってはスタンダードになってしまっているようですが、精進落し前後に初七日法要を行うのが一般的になっています。ですが、よく考えてください。初七日法要の後には、二七日、三七日と七日毎に法要があります。その法要をきちんと行えているでしょうか?
初七日法要だけ、なぜお葬式にくっつけてしまうのか。
もともとは、この流れは関西の風習からきているようです。関西地域では、7日ごとにお墓参りをし、塔婆を立て7日ごとに供養をしています。ですが、関東ではこの例は見られません。火葬場や僧侶の都合によって、没後7日近く経ってしまうケースはあるかもしれません。ですが、その後も二七日、三七日・・・、と供養を行っているでしょうか。もちろん毎日線香を手向け、手を合わせていることとは思います。
風習として、7日7日の法要、供養を行っていない関東地域ですので、二七日、三七日法要・・・をやらない限りは初七日法要をお葬式に組み込むのはどうも違和感があります。
そのような理由から上図からは初七日法要は記載しておりません。
さて、それではそれぞれの形態別にみていきましょう。
一般葬
一般葬とは、身内だけでなく、さまざまな立場の方を広く呼んで行う従来型の葬儀スタイルのことです。スタンダードなスタイルで一般的にお葬式といえば、このスタイルのことを指します。
一日葬
一日葬とは、その名の通り一日だけのお葬式です。お通夜を行わずに葬儀式、告別式と火葬を一日でおこなうお葬式のことをいいます。家族葬のような参列者の制限はなく、一般の方も参列することができます。
要するに一般葬の1日バージョンです。(※基本的に僧侶の立場から一日葬はおすすめはしません)
家族葬
家族葬は、ご家族を始めとする近親者のみで執り行われるお葬式です。少人数のご葬儀と言われることも多いですが、参列者の範囲を限定するため、必然的に規模は小さくなります。小規模なお葬式というよりは、近親者に限るので、結果的に小規模になった、というニュアンスです。ただ、家族葬とはいいつつも、知人や会社関係等をお呼びしてはいけないわけではなく、誰をお呼びするかはご家族様が決めることができます。
一日葬=家族葬となってしまうケースが多いようだが、それは少しおかしなことです。家族葬というのは、近親者のみで執り行うという意味ですので、1日だけの省略バージョンである一日葬、つまりお葬式の規模の話ではありません。また、家族だけで執り行うということから、家族葬=密葬というニュアンスが加味されてしまうこともあるようですが、これも間違いなのです。
そもそも家族葬と一日葬は着眼点が異なる表現の仕方なので、紛らわしいのです。
直葬
通夜や告別式などの儀式を一切行わず、自宅や病院から遺体を直接火葬場に運び、火葬によって弔う葬式のことです。別名で、火葬式と言われることもあります。
いろいろなご事情があり、直葬を選ばれることかと思いますが、その方とのお別れの時間をどう捉えるか、ということをぜひ考えてみてください。
密葬
密葬について、いろんなところで、一般の方は呼ばずに、近親者のみで内々で行うお葬式と説明することがあります。間違ってはいませんが、それだけでは説明が不十分です。密葬は本葬とセットなのです。本葬(あるいはお別れ会)なくして、密葬はなし得ないのです。では、なぜ密葬と本葬にわけて、ある種2回もお葬式を執り行うのでしょうか。
密葬とは
たとえば、芸能人や企業の代表をされたいた等、故人が生前たくさんの方との御縁があり、数多くの方にご参列いただくことが想定されるお葬式があります。そうなると、なくなった直後にお葬式を各方面にお知らせし執り行うと、故人との最後の時間をゆっくり取ることなどできず、あっという間にその大切な時間が過ぎ去ってしまいます。
そこで、近親者で執り行うお葬式と対外向けのお葬式を分けて執り行うことで、きちんと近親者でお別れができる時間をつくります。
社葬をあてはめてみればわかりやすいでしょう。
密葬は社長家族、近親者のみで執り行い、本葬は会社のクライアントや関係各所の方々向けに執り行う。
ある種、密葬だけをみれば、密葬=家族葬と捉えても間違いではないでしょう。ですが、本葬が前提となって密葬があるということは忘れてはいけません。
本葬とは
本葬とは、会社等が主体となって執り行うお葬式の形態です。著名な人や特別大きな功績を残した人、殉職した人などを対象として行うものであり、大規模な葬儀となるのが特徴です。なお、本葬の前には密葬が開かれ、家族や親族で心静かにお見送りする段階があります。
そして、他の葬儀形態と大きく異るのは、喪主が本葬を取り仕切ることもありますが、喪主ではなく葬儀委員長等の執行者を別途設けることが特徴です。
お葬式の形態比較表
一般葬 | 一日葬 | 直葬 | 家族葬 | 密葬 | 本葬 | |
---|---|---|---|---|---|---|
形態 | ◯ | ◯ | ◯ | × | △ | △ |
規模 | × | × | × | △ | ― | ― |
喪主 | 遺族 | 遺族 | 遺族 | 遺族 | 遺族 | 葬儀委員長等 |
日数 | 2日 | 1日 | 半日 | 1日 2日 | 1日+本葬 2日+本葬 | 密葬+1日 密葬+2日 |
備考 | 一日葬とは言わずもがな一日で執り行うこと | 直葬とは通夜・葬儀・告別式を行わずに荼毘に付すこと。 | 家族葬とは形態でもお葬式の長さでもなく、家族だけで執り行うこと。親族も呼ぶケースもある。 | 密葬とは、本葬(あるいはお別れ会等)とセットで執り行うものであって、密かに行う葬儀ではない。 | 本葬とは密葬を執り行った後に、知人等広く多くの方にご参列いただくためのお葬式のこと。 |
お葬式で執り行う儀式のそれぞれの役割
お葬式には、通夜、葬儀、告別式と大きく3つの儀式が1つのまとまりになっています。バラバラにされてしまっている昨今ではわかりにくくなっているかもしれませんが、それぞれ役割が違うのです。
通夜式 | 葬儀式 | 告別式 | |
---|---|---|---|
主役 | 故人と遺族 | 故人と僧侶 | 故人との縁者 |
役割 | 残された遺族が故人との最後の時間をともにするための重要な時間、儀式 | 故人をこの世からあの世に送り出すための僧侶主導の儀式 | 生前縁のあった方々が故人とのお別れをするための儀式 |
表にまとめるとこのようになります。それぞれ故人との関わり方、主役が大きくことなります。もちろんすべての儀式において、遺族が重要なのは言うまでも有りません。
一般的にお焼香に多く参列されるのはお通夜のときではないでしょうか。それは執り行われる時間が大きく関わっており、会社勤めの方々の多くは日中に執り行われる告別式に参列することがなかなか叶わないでしょう。ですが、通夜であれば、18時、19時といった時間に行われるので、平日であっても退勤後に参列することが可能です。
そのような理由から本来通夜とは故人と遺族がその最後の時間をともにする儀式ですが、多くの場合、縁者が参列する儀式へと変わっていってしまっているのです。
ですが、通夜という言葉にある通り、通夜は通夜式が終わって終わりではなく、多くの会館等のお葬式会場では、故人とともに夜を通して最後の時間をともにすることができるよう、宿泊が可能となっています。
まとめ
それぞれのご家庭のさまざまな事情の中で、故人とご遺族にとってどのお葬式の形態がふさわしいのか、一度考えてみてはいかがでしょうか。
葬儀社に言われるがまま家族葬にした、というだけでは、後の祭りにもなりかねません。
遺族が故人とのお別れのための儀式であるとともに、故人が生前出会った人々とのお別れでもあります。
人生最後の卒業式。
どのようにこの世からあの世へ送り出すか、ぜひ考える時間をつくってみてはいかがでしょうか。